東日本大震災、熊本地震、北海道胆振東部地震など、非常に強い地震が数年おきに発生し、
政府の地震調査委員会では南海トラフを発生源とする巨大地震が今後30年の間に、70~80%の確率で発生すると公表しています。
ご存じのように4つのプレートが集まる日本付近。さらに列島には二千もの活断層が存在します。
こうしたプレート同士の摩擦や活断層の動きによって地震は発生し、世界で発生するM6以上の地震の約20%が日本付近で発生しているのです。
このように地震大国に住む私たちにとって住まいの耐震性を高めることは、命や財産を守るために最も大切なことの一つといえるでしょう。
実物大建物実験で、実際の地震をシミュレーション
ホービス新居浜に出展しているハウスメーカー5社は、日々研究を重ね、耐震技術を開発しています。
特に注目していただきたいのが、実際に実物大の住まいを使用し、人工的に地震を発生させ、どの程度の地震に耐えられるのか、
どのような損傷があるのかを調べる「実大建物実験」を実施している点です。
これは、長年ナレッジを蓄積し、経済的・人的コストを投資できる大手ハウスメーカーだからこその取り組みです。
机上の構造計算よりも、より実態に即した実験結果が得られ、私たち消費者にとっては大きな安心感が得られます。
一方で、いくら実験の場で高い数値が得られても施工時にミスがあれば、本来の性能を発揮することができません。
各社は資材や建物の規格化、生産工程の機械化によってミスの発生を未然に防いでいます。
では、各社はどのような研究開発を行い、どのような耐震技術を有しているのでしょうか。具体的に紹介いたします。
【一条工務店】ツインモノコック構造で太陽光発電までも異常なし
一条工務店では創業当初から、実大建物による実験を繰り返し実施。 特に、東京大学をはじめとした産学連携による実験や研究に力を入れてきました。 地震は一つひとつの揺れ方が異なることからさまざまな地震波を想定し実験を実施。 現在では、すべての商品タイプでの実験を行っています。 こうした取り組みから一条工務店がたどり着いたのがツインモノコック構造です。 四方の壁と天井と壁を含めた六面で力を分散する構造で、それぞれの壁が一般的な住宅の壁の2.5倍の強度を持ちます。 再現実験後も太陽光発電が正常に通電し、外壁タイルの落下も無かったとの結果を得られました。
【住友林業】耐震性と開放感を両立するビッグフレーム構法
木にこだわり、構造躯体(柱や梁)に力を入れているのが住友林業です。 一般的な柱が105ミリ角であるのに対して、約560ミリ幅のビッグコラム(大断面集成柱)を採用。 このビッグコラムを高精度な金具を用い梁や土台と直接接合することで、強靭な構造躯体を実現しています。 このビッグフレーム構法は、耐震性の向上もさることながら、余計な柱や壁が必要なくなり、最大7メートルの大空間が可能に。 間取りの変更も比較的容易で、ご家族が成長するにつれて暮らしやすい空間に変更することができます。 住友林業では3階建ての実物大モデルで実験。 東日本大震災と同等の最大加速度2,699galの揺れはもちろん、その数値を大幅に上回る3,406galの揺れをクリアしました。 約20年後に、高さ350メートルの木造超高層ビル実現を掲げる住友林業。このことからも耐震技術への自信がうかがえます。
【セキスイハイム】倒壊ゼロの実績が物語るボックスラーメン構造の信頼性
住友林業が木のしなやかさを生かしている一方で、鉄骨の強度を生かしているのがセキスイハイムです。 強固な鉄骨の柱と梁を工場内の大型溶接機で精密に固定し、シェルターのような強固なユニットを製造。 さらにこのユニット同士を1本で1.5tもの力に耐えられるボルトで結合することで構造躯体を造っています。 ボックスラーメン構造と呼ばれるこの工法で巨大地震に備える一方で、 中小の地震に対しては軽くて強固な高性能外壁「GAIASS(ガイアス)」で地震のエネルギーを軽減し、損傷を抑えます。 それぞれの長所を生かしたハイブリッド型の住まいは、阪神・淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災、熊本地震など、 近年発生した巨大地震において倒壊ゼロという信頼性を発揮しています。
【積水ハウス】ダイナミック・フレームシステム+シーカス
これまで地震の揺れに耐える「耐震」技術を紹介しましたが、 地震の揺れを吸収する「制震」において力を発揮するのが積水ハウスが国土交通大臣の認定を受け運用しているSHEQAS(シーカス)です。 オリジナルのダイナミック・フレームシステムで耐震性を高めつつ、特殊高減衰ゴムでできたダンパー(シーカスダンパー)で、 地震エネルギーを熱エネルギーに変換し、住まいの変形量を2分の1以下に抑えます。 実大建物実験では、阪神・淡路大震災の2倍の揺れを加えても目立ったダメージがなく、 245回もの繰り返し実験でも損傷がありませんでした。 また、独自の外壁パネルロッキング工法により、外壁の割れ、脱落もなかった事は特筆する部分です。
【ミサワホーム】センチュリーモノコック構法+MGEO
ミサワホームにおいても、耐震と制震の両方で技術を追求しています。 120ミリの厚さを誇る木質パネルを高分子接着剤とスクリュー釘で強固に接合したセンチュリーモノコック構法は、ジェット機などと同様な構造で、 どの方向からの力も建物全体で分散します。パネルの芯材は人工乾燥によって含水率を15%以下に低減し、 反りやひび割れなどの発生を抑制。基礎との接合には独自のアンカーボルトを施し、繰り返しの大余震にも対応します。 また、制震ダンパーを使用した制震装置「MGEO(エムジオ)」で、地震エネルギーを最大50%減退。 震度6弱の揺れにおいて、一般的な鉄骨構造と比較して建物の変形量を8分の1に抑えることができるという実験結果が出ています。